Summary
島根県立石見美術館の二人展「既知の宇宙|未知なる日常」で発表した直径10mの体験型インスタレーション。
タイトルのインサイド・アウトは”裏返し”や”ひっくり返し”といった意味を持つことばだ。直径10mの半透明なミラー素材のドームと6色で構成された回転する幾何学立体、高津川の音や香りの演出も加えたこの体験型インスタレーションは「地球の表面を裏返すことで宇宙全体を閉じ込める」というアイアから制作を開始、益田市の内田交流センター体育館での滞在制作によって完成させた。
中央で回転する立体は私が「PION(パイオン)」と呼んでいる数学的な四次元の性質を持つ構造体だ。鑑賞者がこの図形を眺めるとき、その視点は原理的に裏返ってしまう。通常宇宙は球体である地球の表面から外側に向かって無限ともいえる大きさで広がっているわけだが、宇宙空間にこのパイオンを置くと仮定すると、地球の表面が裏返って宇宙はその球面から中心に向かって無限に広がる。科学者はこの宇宙の果てを観測することで宇宙のはじまりを知ろうとしているが、宇宙にある全ての星がこの内側に閉じ込められたとすれば、中心に向えば向かうほど光は強さを増し、その極点にビッグバンという宇宙のはじまりがある。
裏返った空間を体験するとはどういうことだろう。私たちはそれぞれに内部と外部を境界する面を持っている。つまり身体だ。外側に広がる宇宙と同様に、この境界面の内側には意識や思考といわれる広大な内的宇宙が広がっている。
制作協力
・サウンドディレクション Nature Good Mode
・アロマディレクション tronc 佐藤 幹子
・回転機構提供 市川 平
InsideOut
制作年:2022
素材:ポリカーボネイト、ミラーフィルム、カーボンチューブ 、LED照明、回転機構、メディアプレイヤー、スピーカー、アロマディフューザー、木材、他
サイズ:直径10m